ヨーロッパバックパッカー(バルセロナ→マルセイユ)
次は南仏リゾートだ
バルセロナでサッカー観戦ができたことに満足したため、早々と次の目的地を目指すことにした。
北フランスから海沿いをなぞるように反時計回りに南下してきたため、そのまま南仏に行ってみることにした。
南仏といえばニースやらマルセイユやらバカンスの香りがする。
既に12月に入っていたが私は南国バカンスを目指した。
ストライキは労働者の正当な権利
と、どこかで習ったようなセリフだが、私の人生でストライキに関わるなんて絶対無いと思っていた。
マルセイユ行きの夜行列車を予約しに駅に行ってみると、フランス方面行きの列車はフランス鉄道のストライキで使えないとのこと。
持っているユーレイルパスが紙くずになった瞬間であった。
バルセロナにとどまる理由も無かったため、代わりにオススメされた夜行バスに乗ってマルセイユまで行くことにした。
夜の18時頃にバスに乗り、到着は朝5時頃とのこと。
車内はストライキの影響なのかほぼ満員で、席の狭さをより一層狭く感じさせた。
出発してしばらくして大事な事に気がついた。
夜ご飯を食べていない…。
またやってしまった。
慌ててカバンを弄ると、朝ユースホステルから拝借していた朝食のパンを一つ発見した。
カチコチに硬くなったパンを顔を歪めながら一生懸命食べた。
この時食べたパンは、私の人生の中で一番まずいパンとして今でも鮮明に記憶に残っている。
こんなに味のないパンがあるのかという衝撃だった。
バスジャック…?
座り心地も悪いので眠れないかもなと心配しながら景色を見ていたが、あっという間に眠りについてしまった。
数時間後、周りの悲鳴と叫び声で私は飛び起きた。
深い眠りについていた直後だけに、状況が全く理解できない。
ただ、車内は男性の怒号と女性の悲鳴で溢れかえっている。
唯一絞り出た答えは
…バスジャック!?
心臓がドキドキする音が聞こえる。
次の瞬間、誰かが叫んだ声で状況を理解した。
「Driver is drunk !! 」
外を見ると、バスは物凄いスピードで走りながら右へ左へ蛇行運転を繰り返す。
道路脇のガードレールにぶつかりそうになるたびに、運転手の目を覚まそうと全員が大声で叫ぶ。
人間追い込まれると、とんでもない過去から記憶を引っ張ってくるものらしい。
小学校2年生の時の担任の高口先生が、「事故で死ぬ人のほとんどは頭を打って死ぬのよ」と言っていたことがハッと頭に浮かんだ。
カバンに入れていたニット帽2つを重ねて頭にかぶり、最悪の事態を想定しながら、只々最悪の事態が現実にならないことを揺れる車内で祈っていた。
ふりだしへ戻る
数十分後、走っているバスをパトカー3〜4台が走りながら包囲した。
包囲しながら安全な速度までスピードを落としていき、サービスエリアで無事停車させることに成功した。
乗客は全員降ろされて、ここで別の運転手が来るまで1時間待つらしい。
真夜中に異国のサービスエリアで立ち尽くす日が来るとは夢にも思っていなかった。
1時間後、別の運転手が来てさぁ再出発と行きたかったのだが、何故か一回バルセロナまで戻るとのこと。
結局バルセロナまで戻り、またそこで別の運転手に代わり、再出発となった。
なんだこれは。
どういう理由なのか聞く元気も残っておらず、とにかくマルセイユまで頼むぞと祈りながら、改めて眠りについた。