パザパコンティニュエ

ヨーロッパバックパッカー記、介護、英検、住宅などの備忘録

ヨーロッパバックパッカー(ポルトガル②)

ポルトガル到着即トラブル

 

ポルトガルの首都、リスボンのサンタアポローニャ駅に着いたのは朝10時。

昨日の昼過ぎに遅めの昼食を食べてから一切食べ物を口にしていない。

 

とにかく何か食べなきゃ。

 

決意に満ちた顔で列車を降りると、駅の構内に沢山の人だかりができていた。

 

なんだなんだ。

デモでもやっているのか。

しかし改めて見ると、みんな手に宿のパンフレットやメモ紙を持っている。

 

あぁ客引きか。

 

そういえばフランスでは一切見なかったな。

そう思いながら無視して歩みを進めると、ボロボロのジャージを着て鼻毛が伸びきったおじさんがずっと声をかけ続けてきた。

無視を続けると、そのおじさんはおもむろにポケットから何やらメモを出してきた。

 

日本語だ。

 

そのメモ紙には日本語でこう書かれていた。

 

「やすい、きれい、15ゆーろ」

 

胡散臭い。物凄く胡散臭い。

 

ただ空腹と疲労で思考が回らない私は、何故かそのおじさんについて行くことにした。

 

肩を並べて歩くこと2〜3分。

いきなり停めてあった車に乗れと半ば強引気味に後部座席に押し込められた。

 

やられてしまった。

この旅初めてのトラブルだ。

空腹は危機管理能力まで弱めるのか。

私は絶望感の中、おじさん、いや悪党にバレないようにこっそり自分の財布からキャッシュカードを抜き取って、右足の靴下の中に入れた。

これでまだ旅は続けられるだろう。

 

車が停まり、降りろと合図をされると、ボロボロの建物へと誘導される。

マフィアのアジトなのか。

 

建物の中に入ると悪党はこちらを向いて、親指と人差し指を顔の前で擦り合わせて来た。

 

あぁ、金を要求するジェスチャーは万国共通なのか。

夜行列車で読んでいた父親からもらった4カ国語辞典で覚えたてのポルトガル語を絞り出した。

 

「クワントコスタ(いくら払えばいい)?」

 

帰ってきた答えは意外なものだった。

「フィフティーンユーロ」

 

ん?

 

ブラックジョークで私を試しているのだろうか。

改めて確認してみた。

「フィフティーンユーロ?」

「イエス、フィフティーンユーロ」

 

あれ。

 

客引きは良いこともある

 

悪党改めおじさんは部屋の鍵を渡してくれた。

部屋へ案内されると、シャワーとテレビ付、そしてなんと個室!で、フィフティーンユーロ。

 

凄い。おじさん凄い。

おじさんの経営努力が凄いのか。ポルトガルという国が凄いのか。

とにかく、いきなりVIPになった気分である。

 

しばらくポルトガルにいようかな。

 

そう思いながら、靴下の中からキャッシュカードを財布に戻した。

 

リスボンフードファイト

 

さぁご飯を食べよう。

何でもいいから食べよう。

宿のすぐそばにあった飲食店に私は駆け込んだ。

 

普通の外観とは裏腹に、中に入ると意外とオシャレな店で、白いテーブルクロスが掛かっているあたりは大衆食堂といったものよりはワンランク上のお店であることが感じられた。

 

渡されたメニュー表を開き、何となく肉っぽいゾーンを察したため、適当に指差す。

 

10分後、テーブルに置かれたのはアサリと豚肉の角切りを煮込んだような料理。

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後から分かったのだが、ポルトガル南部の名物料理、アレンテージャーナというものらしい。

これが大皿に大量に出てきた。

おそらく3〜4人前だろうか。

 

普通なら困惑するところだが、今の私は空腹度100%。

完食してやる。

フードファイトだ。

 

その決意は一口目の豚肉で脆くも崩れ去る。

 

か、かたい。石を食べてるみたいだ。

 

何度も精神統一しながら、私は空腹だ私は空腹だと念じて肉を口に運ぶが、すべての肉が固すぎる。全然噛み切れない。

 

それでも腹八分目まで食べたところで、胃というよりはアゴの筋肉がノックアウトされて私のフードファイトは終了した。

 

半分以上残された名物料理を背にして、ばつの悪い顔をして私は店を出た。