ヨーロッパバックパッカー(最終回)
パリで最後の時間を潰す
パリに帰ってきてからは、とにかくお金がないので朝は白い門の卵かけご飯、昼は屋台のケバブ、夜はパスタ自炊を繰り返した。
スーパーで売っているビールが信じられないくらい安いので、夜はいつも食堂でそれを飲んでいた。
日中はいつもパリの中心街に出て、ブラブラ歩いてはデパートに入ったり公園で休んだり。
旅が間も無く終わる事を認識してからは何か落ち着かず、見足りないものは無いか後悔しないようにとにかく歩き回ったが、只々疲れるばかりだった。
楽しみを求めて歩き回るのとはちょっと違った。
パリへの「凱旋」
パリ最後の夜。
初めてパリに来た時から行かずに取っておいた場所があった。
凱旋門。
アウステルリッツの戦いに勝利した記念にナポレオンが建立を命じた門である。
ナポレオンの在命中に凱旋門は完成されず、死後、棺の中に入って初めてナポレオンはこの門をくぐることになった。
凱旋。
「凱」とは日本語で「勝利の時に奏でる音楽」の意味。
「旋」とは、日本語で「帰ること」
凱旋とは、戦いに勝って帰還すること。
1ヶ月以上の長い旅を明日終えようとしている中で、凱旋門に登り、上から見下ろすパリの景色はどう見えるのか。
1ヶ月振りにパリに帰ってきて、私の旅に「凱旋」を感じることができるのか。
それだけが楽しみで最後まで凱旋門に登るのは取っておいた。
凱旋門の上から
凱旋門の上から、放射状に広がったパリの夜景を見た。
目の前には只々シャンゼリゼ通りがまっすぐに伸びている。
暗くて見えないが、通りの奥にはパリに来て真っ先に行ったカフェがあるリュクサンブール公園があるのだろう。
1ヶ月前にあのカフェに入り、ドキドキしながらフランス語を話した記憶が蘇る。
道には所狭しと車が渋滞しており、日本とは比較にならない程、皆クラクションを鳴らしている。
クラクションで喧しい地上とは打って変わって、とても静かな凱旋門の上で旅を振り返った。
旅が終わる焦燥感や日本に戻る開放感、1ヶ月経って多少自分が強くなったことへの充実感。
凱旋門の上で1時間ほどぼーっと景色を眺めながら、旅を終える感覚に浸っていた。
シャルルドゴール空港のインフォメーションセンターで何一つフランス語を聞き取れずに諦めたところから旅が始まり、1ヶ月の間で私自身もとてもたくさんのことを学んだ。
最後に
尊敬するスポーツ選手の言葉。
「旅とは人生であり、人生とは旅である」
一人旅は自分を強くしてくれるし、たくさんの自分の可能性を気付かせてくれる。
悩んでいたことが、旅に出た後に振り返ると、なんてちっぽけなことだったんだと思うこともある。
人生は限られており、練習もできない。
その中で、何かできるとすれば、人生の縮約である「旅」を経験すること。
旅で人生の可能性はどこまでも広がる。
少しでも興味があったら、その場所まで旅に出よう。
旅とは人生である。