ヨーロッパバックパッカー(ポルトガル③)
哀愁の街リスボン
リスボンの街をしばらくブラついた。
ここは何かすごく懐かしい雰囲気を感じる。
街はどこか薄暗く、それでも歩く人たちはニコニコ明るく話しながら歩いている。
街には日本で言うところの演歌である「ファド」を歌っている歌手の声が、色んな飲み屋の中から漏れ聞こえてくる。
街のシンボルマークであるサン・ジョルジェ城からリスボンの街並みを見降ろすと、家々は赤茶色の屋根で統一されており、大聖堂を見たときのような圧倒感は無いが、何か懐かしさと共に感動させられるものがある。
公園ではいい大人がカードゲームに興じており、周りにいるギャラリーがやんややんやとそれを盛り上げる。
街のあちこちでは子供たちがサッカーボールを蹴って遊んでおり、自国のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドになるのを夢見ている。
日本で言う「オシャレ」な服を着ている人はあまりいない。
上が紫、下が緑の裾がぎゅっと絞られている古いアディダスのジャージを着ている人を見たときに私はハッと思った。
一昔前の日本みたいだ。
何かずっと感じ続けている懐かしさは、過去の日本と照らし合わせているのかもしれない。
私的な意見になるが、ここリスボンは家族や恋人を連れて来てもそんなに盛り上がる場所ではないと思う。
ただ物凄く魅力的な街であり、「哀愁」という言葉がピッタリだ。
ヨーロッパ最西端「ロカ岬」へ
街の広場にあるインフォメーションセンターでロカ岬への行き方を訪ねたのだが、低レベルな私の英語はまるで通じない。
追い打ちをかけるように、インフォメーションセンターのお姉ちゃんも英語をあまり話せない。
コミュニケーションがうまくいっていたフランスとは明らかに違う。
そして今まで自分のフランス語には何の自信も持っていなかったのだが、ここに来て初めて自分の意思をフランス語で伝えられていたことに気がついた。
嬉しいような悲しいような。
粘り強く話し合った結果、私がロカ岬へ行きたいことはおそらく伝わったように感じたが、正直怪しい。
明朝、指示されたバスに乗って予期せぬ旅が始まる覚悟をしながらインフォメーションセンターを離れた。
街の広場に戻ると、中心にある巨大なクリスマスツリーをみんな嬉しそうに見つめている。
先ほど話しかけてきたマリファナ売りのおじさんがまた会ったなと誘ってきた。
もう私は彼の友達になったらしい。
哀愁の街リスボン。
人、モノ、すべてがこの街の雰囲気を作っている。