パザパコンティニュエ

ヨーロッパバックパッカー記、介護、英検、住宅などの備忘録

ヨーロッパバックパッカー(bayeuxバイユー②)

オマハ・ビーチ!

 

いよいよ待ちに待ったオマハ・ビーチ!

第二次世界大戦で最も激しい戦場の一つとなったビーチに自分が立てる。

どんな景色が見えるのか、何を感じるのか。

考えるだけで胸が踊る。

 

町のインフォメーションセンターに聞くと、駅前のバス停から出るバスに15分程乗り、アロマンシュレバンというところで降りたらそこがビーチだとのこと。

 

昨日ブレース君に何回オマハ・ビーチの事を説明しても彼はピンと来ていなかったが、こっちでは全く別名のアロマンシュレバンという名前だったのか。

 

バスがやってきて、いざ乗車!

しかし、観光客は一人も乗っておらず、観光バスというよりは町の人たちが生活の足として使っている路線バスのようだ。

 

オマハ・ビーチ?

 

10分程で小さな街を抜けると、一気に田舎の風景が広がった。

バス停に着くたびに1人、また1人とおそらく家に帰るために生活用の路線バスから降車していく。

 

遂には私一人だけになり、不安が募ってくる。

 

不安に耐えきれなくなり運転手に、「アロマンシュレバンに行きたいんだが合っているか?」と恐る恐る聞くと、「大丈夫、着いたら教えてやる」とのこと。

 

一人になってから10分程経っただろうか。

バスが停まり、運転手がこちらに向かって何か言っている。

外は変わらず田舎の風景。

人っ子ひとりいない。

 

運転手の言葉は全く聞き取れなかったし、そうであることを信じたくなかったが、恐らくここがアロマンシュレバンなのだろう。

メルシーボークーと言いバスを降りるのはもちろん私一人だけ。

目の前にはだだっ広いビーチ。

後ろにはこれまただだっ広い草原。

繰り返すが、前にも後ろにも人っ子ひとりいない。

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オマハ・ビーチ?

 

少なくとも私は観光客で賑わうオマハ・ビーチを想像していた。

だが、ここには人っ子ひとりいない。

なんなんだここは。

ただの湿原じゃないか。

 

カンの街に帰りたい気持ちが募ってくる。

しかし、よくよく見るとビーチには無数の砲台の残骸がある。

海の中には、自然界が作ったものではないと明らかに分かるコンクリートの塊も無数にある。

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ちょっとテンションが上がる。

 

とりあえず遥か遠くに建物が数棟見えるので、そこまで歩いてみることにした。

あまりに人がいないので、海外では絶対やってはいけないだろう行為なのだが、リュックをそのままバス停において、歩みを進めた。

もちろん重いリュックをおけば、それだけ歩くのが楽になるのだが、今考えてもあまりにも危険な行為。

それでも大丈夫だろうと思わせるぐらいの孤独感がそこにはあった。

 

オマハ・ビーチ…

 

遠くに見えていた建物群に着いた。

何だか映画館のようだが、何となくフランス語を読むと、ここがオマハ・ビーチの博物館のような場所であることが分かった。

 

もちろん人はおらず、閉館中。

 

建物群の正体はその周りをクレープ屋さんやお土産やさんなどが取り囲んでいたものだったのだが、もちろん人はいない。

 

何となく状況が見えてきた。

 

ここはバカンスシーズンのみ人が集まり、オフシーズンは誰もいなくなるんだ。

それでも観光客すら1人もいないのは余程悪いタイミングで訪れてしまったのか。

 

オマハ・ビーチでの出会い

 

ふと後ろに気配を感じた。

振り返ってみると、私よりも大きいくらい巨大な黒い野犬が私のすぐ後ろにいた。

じっとこっちを見ており、ただならぬ恐怖を感じた。

 

すると野犬はこちらを振り返りながら前へ歩き出した。

私が立ち止まっていると、また私のところまで戻ってきて、こっちだぞと言わんばかりにまた前へ歩き出す。

 

道案内でもしているつもりなのだろうか。

 

下手に逆らって野犬に噛み付かれたりでもしたら大変だと思い、目で合図されるがままに野犬について行った。

 

異国の地で人っ子ひとりいないビーチで野犬の後ろをひたすらついていく。

 

私は何をやっているのだろうか。

 

本気でそう思った。

 

しばらくすると野犬の方が飽きたのか、どこか遠くへ行ってしまった。

 

一体この時間は何だったんだろうか。

 

やるせない気持ちになりながら、バス停に戻りひたすらバスを待った。